December 18, 2020

  • 連載 サンタからの逃走
    はるちゃんの部屋に、ジュウオウキューブが9匹隠れているのが見つかって3日経ちました。キューブ達は、ポツリポツリと、サンタのところを逃げ出してからのここまでの冒険を語りはじめました。
    「サンタの工場は北極にあってね、雪と大きな家と大きな工場と大きなコンテナヤードと倉庫があってね」
    キューブライオンは一生懸命語りますが、北極の事をあまり知らない3歳児にはピンときません。
    お母さんは、頭のなかで暴風に雪吹きすさぶ中、煌々と明かりの灯った巨大なログハウスとそこに連結されたプレハブの工場、そして半ば雪に埋もれたコンテナが思い浮かぶのでした。
    キューブ達が語るには、彼等は薄暗い大きな箱の中に何年も埃をかぶりながら眠っていたそうです。箱は空気の中の湿気で徐々に傷み、キューブ達がこっそりそこから抜け出してもうるさく連れ戻しません。暗く寒い倉庫のなかでも、キューブ仲間もいましたし、他の箱からも出てきた友達もいたので、それなりに楽しい毎日でした。
    ガチャ。
    突然、箱の壁が二つに割れ、妖精が現れました。妖精は人間の子供ほどの背丈で、白い髪と尖った耳をしています。妖精は手にもった白いボードを覗きながら、「えーと、20160580005の、ありゃ、箱はこりゃ駄目だな…内容物が1、2、3と1のa、bね…」と呟きます。そして、キューブ達を一例に並べると指差し確認をし、持ってきた白いカゴに入れました。ボードを指先でいじり、さらにタッチペンで何か記入すると、「うー寒い」と独り言をいいながら、キューブ達の入ったカゴの蓋を閉めました。
    (続く)
    (多分続かない)
    連載 サンタからの逃走 第二回

    「うーさぶいさぶい」と言いながら妖精はコートの襟ぐりをぎゅっと掴み、腕から下げた籠にボードを突っ込むと、キューブ達がいた部屋の扉をがしゃんと閉めました。それから、とことこ、とことこと長い距離を雪と風の中をしっかりした足取りで進み、やがて大きな木製の扉の前に来ました。妖精は扉についた大きな金色のベルまでジャンプすると、慣れた様子でを鳴らしました。ガランガラン。すると、扉の左下にある、小さな扉が開きました。
    「じゃ、次これ」と、小さな扉から顔を出した小さな妖精が言いました。手には小さな棒状の何かを持っています。
    籠を持ってきた妖精は籠からボードを引っ張り出すと、その棒状のものをボードに近づけてピッと言わせました。そして「ふう、まったく、雪原は白いのにとんだブラックだぜ」と呟くと、籠を小さな妖精に渡し、再び雪原のなかをとことこと歩き出しました。
    籠の中のキューブ達は、「寒かったね」「そう、快適だったよ」と言い合いながら、籠からこっそり顔を出して覗きました。小さな妖精は緑の服をきてピンクの髪をしていましたが、そこに赤と白のキャンディがいくつもべったりついていたのでキャンディの色だったかもしれません。「いいかい、お前達。お前達はプレゼントになるんだから、そこらのものにさわって汚れたり汚したりするんじゃないよ。そこ、エレファント、鼻をしまえ!」小さい妖精は厳しく言うと、籠から伸びてジンジャークッキーの匂いかいでいたキューブエレファントの鼻に布巾を投げつけました。「それでお互いのピカピカに拭くんだよ。箱ナシでも汚れはいけないよ。」
    キューブ達にはどういうことだかよくわかりませんでしたが、ピンクの妖精はキューブ達よりは大きくてなんだか怖かったので、言うことを聞くことにしました。
    (続く)
    (多分続かない)
    連載 サンタからの逃走 第三回
    キューブ達は確かに、薄暗い倉庫のなかで埃にまみれて遊んでいましたので、灰色にすすけていました。きゅっきゅっ。「ライオン、お顔広げて。」ガチャ。「キューブイーグルも、羽とお顔を見せて。」ガチャンガチャン。ふきふき。「うわぁ」キューブ達は、お顔を拭き目に積もっていた埃が取れると、自分達のいる部屋の様子に驚いて息を飲みました。天井には大きなシャンデリアがあって、赤、青、黄色、緑、白のガラスのボールが吊るしてあり、それが光を受けてキラキラ光っています。そのすぐ下には沢山のおもちゃと箱、書類の山とマルチファンクションプリンター、リボンが溢れ、いろいろな髪色の小さな妖精と、いろいろな色の帽子で頭を隠した大きめな妖精が忙しく歩き回っていました。
    キューブ達に体を拭くことを言いつけた妖精も、大きめのオレンジの色の妖精に何か言われると、一言二言呟いて立ち去りました。
    「何て言った?」
    「聞こえなかったなぁ」
    「待っとけ、だと思うけど」
    キューブ達はしっぽを拭きながら話し合います。
    「助けてー」
    シュシュポポ、シュシュポポ。
    床にしいてある玩具のレールを、ものすごいスピードで駆け抜けていく玩具の機関車がいます。キューブ達がおどろいてその行き先を眺めていました。機関車はブロックでできた雪山のトンネルを抜け、ミニカーとラジコンの谷を抜け、ぬいぐるみを撥ね飛ばしながら進みます。その引っ張る滑車には沢山のキャンディチョコレート載っていて、時々妖精のお尻にぶつかっては張り付いています。
    「わあ、キャンディだ」
    「それより、可哀想だよ、助けようよ」
    「キャンディだしね」
    「どうやったら止まるかな」
    それで、キューブイーグルがピョーと鳴きながら空中に舞い上がり、キューっと急降下して機関車さんに近付きました。
    「あ、お願い!止めてとめて!」
    「どうすればいいの?」
    「背中の黒いボタンを押して!」
    (続く)
    …休載のお知らせ…
    娘に話した内容がそろそろ終わるので、続きをでっち上げられるまで(たぶんずっと)休載いたします。